−玲奈シナリオ−




(玲奈・HAPPY)

*「ほらお嬢ちゃん早く乗りなって!彼氏と喧嘩でもしたのかい!?そんないつまでも意固地になっているなって!」
そういって豪快に笑ってみせる。
……少女はしぶしぶといった様子であったが、結局バスに乗りこむことにした。
俺は少女のそんな姿に、思わず微笑みそうになってしまった。
雅弘「……だっ、だったらさ!俺と友達になろうよ!!!俺、玲奈みたいな後輩と友達になれたらホントに幸せだよ!」
玲奈はその言葉に、微かだが……本当にわずかではあるが……たしかに微笑んでくれた。
俺はその微笑みが嬉しくて、つい彼女の手をとると思いきり握りしめた。
そして子供のようにぶんぶんとその腕を振り回し、喜びを表現する。
手を握りしめる俺に対して玲奈もまた、そっと…だがはっきりと俺の手を握り返してくれた。
ひんやりとした冷たさ……だけど優しさを内に秘めていることを感じさせる……たとえ手の平は冷えても、手の内側を暖めてくれる手……
…そんな優しさと柔らかさを備えた手だった…
いまあるのは純粋なまでの喜び。
そして幸せ。



(玲奈・BAD)

ひょっとすると俺はもう死んでいるのか?
だからなにも見えない。
なにも感じない。
雅弘(……違う……)
俺の命が燃え上がる。
最後の命の火が燃え上がる。
ろうそくの消えるわずか一瞬……激しく、激しく燃えさかるように……輝きを放つ。
俺の目に光が灯った。
……その俺の目に映ったものは……
雅弘「……レ……ナ……」
……一瞬だが……俺の視線がとらえたさきに、馬乗りの体勢で俺の首を絞める玲奈が見えた。
わずかに見えた玲奈の表情がふたたび闇の中に埋もれ消えていこうとし、それと同時に俺の意識もまた暗闇に染まっていこうとする。
『死』という感覚がとても身近に感じられた
親しい現実に感じられた。
だがいまの俺には死などもはや関係なかった。
それよりもはるかに、俺にはさきほどわずかに見えた玲奈のことの方が印象的だった。
……玲奈の表情……
俺を見つめる表情があまりにも強烈だった。
俺はその表情を決して忘れはしないだろう。
……その表情には……
−−強烈な殺意−−
……そして……
……それを遙かに上回る……



遙かに、遙かに上回る、悲しみに包まれてた。
俺は死んでもその悲しみを忘れない。
命が消えたとしても、忘れられないほど、絶望で孤独な悲しみに満ちた表情だった。
俺は忘れない。
決して忘れない。
俺は背負う。
玲奈の悲しみと。
玲奈の存在を。
決して玲奈を忘れない。
だって……大切な友達なのだから……


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