アスファルトに眩暈のような陽炎が揺らめく。
季節は、夏。
無邪気な熱気を運んでくるのは、
絵の具のみず色をそのまま広げたような空と蝉時雨。
影すらも消してしまいそうな強い日差しに、人も心も、開放される。
真っ直ぐに、伸びやかに。力強い希望に疑いのカケラも抱くはずはなく。
季節は、夏。
影すらも消してしまいそうな強い日差しの、ほんの隙間。
光と対極にある闇の、強さは光に比例する。
痛いほどまばゆい日差しなら、影の密度は純粋に重い。
一抹の風が風鈴の音色を運ぶ。
時の流れの狭間。夏の勢いから身を隠す一瞬。
無意識に前進だけを強いられた身体を休めて、わき道に逸れる。
びいどろの中に閉じ込められた美しさに気づくとき、
人は全てを投げ出しても惜しくないと涙する。
茫漠たる奔流の、ほんの一粒の為に。
そして、季節は、夏。